ジャケットやスーツの上着の下襟(ラペル)にあるホールを「フラワーホール」と呼びます。
フラワーホールの呼び名通り、元は花を挿すための穴でした。
花を挿さなくなった現在でも、会社員の方は「社章」を付ける穴として使っていることも多いのではないでしょうか。
このフラワーホール、元々は風をしのぐために襟を立てたときに、襟が倒れないようにするボタンを付けていた名残と言われています。
その名残に1936年、イギリスのエドワード皇太子が花を挿し出したことが「フラワーホール」の始まりであると言われています。
またフラワーホールはプロポーズの時にも使われていました。
その昔、男性が女性にプロポーズするとき、一輪の花を手向けるのが通例でした。
女性はプロポーズにOKなら、一輪の花を受け取り、フラワーホールに挿すという使われ方もされていたそうです。
フラワーホールの裏側には、チーループと呼ばれる「糸」が存在します。
チーループの「チー」とは茎のことで、花をフラワーホールに挿し、裏側から茎をチーループで留めるのが正式な使い方です。
ジャケットやスーツにフラワーホールがある場合、裏側にチーループが存在するかどうかは、ジャケットやスーツの質を判断するひとつの要素と言えます。
正しくスーツの歴史を知り、考えて作っている職人であれば、フラワーホールの裏側にチーループが存在します。
普段、人から見える場所ではありませんが、こういった自己満足が上質なジャケットやスーツの雰囲気を格上げしてくれるのでしょう。
フラワーホールと合わせてチーループも覚えておいてください。