アメリカのオバマ大統領や日本の安部首相が着けているネクタイをよ~く見てみると、その日に行うタスクによって、色を使い分けていることに気づきます。
彼らがリーダーとして多くの人々から支持されているのは、リーダーシップがあることはもちろん、カラーコーディネートを上手く使い分けているのも、大きな理由のひとつです。
『人は見た目が9割』
なんて言葉がありますが、色から受ける影響は大きく、私達は、無意識に相手が身につけている色で、その人を判断してしまっています。
身につける色で判断されてしまうので、その色の使い方を間違ってしまうと、新たな取引先との商談が上手くいかなかったり、同僚や部下と上手くコミュニケーションが取れなかったりとマイナスの作用が働いてしまうことも。
逆に色の使い方が上手な人は、プレゼンのスキルが人並みでも、なぜかいつも商談が上手くいくし、同僚や部下とのコミュニケーションも良好で、仕事の成功に近づきます。
2005年には、イギリスの科学誌『ネイチャー』にも、色が人に及ぼす影響について研究された記事が掲載されています。
内容は、2004年に行われたアテネオリンピックにおいて、ボクシング・テコンドー・レスリングという3つの競技で、赤のユニフォームを着た選手と青のユニフォームを着た選手の勝率を調べると、なんと赤いユニフォームを着た選手の方が20%も勝率が高かったのです。
世界の一流選手が集まるオリンピックのような舞台で、勝率に20%もの差が出るのは、偶然でしょうか?
また、サッカーのプレミアリーグにおいても、マンチェスター・ユナイテッド、アーセナル、リバプールといった赤いユニフォームを採用するチームが常に上位にいるのも、色が人に影響を及ぼす一例といっていいでしょう。
さらには、白やオレンジといった色を使うことが多かった街灯も犯罪を抑止するために効果が高いことが実証された青色に変える自治体が増えているのも、色の影響を上手く使った例です。
このように色が私達に与える影響は、意外と大きく、色を上手く使いこなせる人とそうでない人では、人生においてどれくらいの差がつくかが簡単に想像できることでしょう。
では、果たしてそれぞれの色には、どんな心理効果があって、どんな場面で有効なのか?
人生で大事な場面で、使ってはいけない色とは?
立正大学名誉教授でもある心理学者の齋藤勇先生の著書『色で操る心理学』を参考に明日からすぐに役立つビジネスシーンで使える色の効果について、お伝えいたします。
それぞれの色の特徴と効果を理解しよう
では、まずそれぞれの色がもつ特徴と効果について、お話しいたします。
各色の特徴を知ることで、服装に取り入れる効果的なカラーコーディネートが可能になるからです。
また、色の特徴や効果を知ると、服装だけではなく、資料を作る際に効果的な色の使い方に応用できたり、自分のモチベーションを上げたり、リラックスできたりといった色の使い方が分かるようになります。
黒は大事な場面を演出
スーツの基本カラーとして、人気が高い黒。
黒はどんな色とも相性が良いため、靴やベルトやカバンといった小物によく使われますよね。
黒には、「威厳」・「風格」・「重厚感」といった印象を与える効果があります。
そのため、黒のスーツは、冠婚葬祭のシーンで着られ、一国の首相や裁判官といった権威を象徴する人や社会的地位の高い人が身につけることが多い色です。
黒を身につけることで、相手に対して、威厳や風格を演出することができるので、その場の主導権を握りやすくなります。
なので、大事なプレゼンや商談では、黒のスーツを着ると効果が高いです。
また、黒い服装は、デキる男に見られるというメリットもあります。
体が引き締まっている男性は自己管理能力が高いデキる男という印象がありませんか?
黒には、視覚的に体を引き締めて見せる効果があるため、「体が引き締まっている男性=自己管理能力があるデキる男」という印象を与えることができます。
相手にデキる男だと思ってもらい場面では、黒をチョイスするのがいいでしょう。
白を利用して、クリーンなイメージを
いつの時代も、女性が男性に着て欲しい色として人気の白。
男性にとっても白が似合う女性は魅力的に感じるのでは?
白は、「清潔」や「素朴」といった印象を相手に与えることができ、「誠実」・「純粋」といったフレッシュなイメージを連想させる色でもあります。
お医者さんが白衣を着ているのも、清潔で誠実であるという印象を患者さんに持ってもらい、安心してもらうためですね。
ただ、ビジネスシーンでは、全身、白のスーツは逆に悪印象。
なんだかウサン臭く見えてしまいます。
ワイシャツやハンカチといった小物に限定して、白を取り入れるようにしましょう。
存在感を消したい時は、グレー
グレーは、どんな色とも合わせやすく、着る人を選ばないことからクローゼットの中が、ついついグレーで占められている…という人も少なくないのでは?
グレーには、「穏やか」・「信頼」・「順応」といったイメージがあり、協調性が高い人間だという周りに印象づけることができます。
また、従順さや忍耐強さを表す色でもあるので、集団の中で敵を作りにくくする効果も。
ただ、地味で無難な色なので、グレーの以外の色を取り入れて、地味になりすぎない工夫をしましょう。
マジメさをアピールするならネイビー
ネイビーは、名前の由来ともなったイギリス海軍の制服の色だったこともあり、権威や信頼を証明する色ですね。
リクルートスーツの定番ともいえますし、相手に信頼や落ち着きを与えることができます。
そんなネイビーが持つ色のキーワードは、「権威」・「真面目」・「知的」・「信頼」。
黒と青が持つ特性をあわせ持っているので、知的で誠実といった初対面では、相手に好印象を与えることができる色ですね。
なぜ、戦隊モノのリーダーは赤なのか?
赤は、産まれてからはじめて識別できる色で、私達、人間とは密接に関わりがある色です。
世界共通で、信号の「停まれ」は赤。
目につきやすく、注意や関心を惹きやすい色ですね。
そんな赤色から受けるのは、「エネルギッシュ」・「活発」・「情熱的」・「アクティブ」といったイメージです。
実際、赤色にはアドレナリンを分泌し、興奮させ、気分を前向きにさせる効果があります。
また、そういった効果があるので、赤色はリーダーシップを印象づける色でもあります。
リーダーや指導者がココぞという場面で、赤を身につけて「自分がリーダー」だということを印象づけるのはコレが理由ですね。
戦隊モノのリーダーのイメージカラーが、いつの時代も赤というのも、ちゃんと理由があるのです。
青は世界共通で人気のカラー
「海」・「空」・「水」は青色で構成され、人類ではじめて宇宙に行ったガガーリンは地球を見て、「青かった」とコメントしているように私達が住む地球は青そのもの。
世界的にも青色は、好きな色として人気が高い色です。
そんな青色には、興奮を抑えて気分を落ち着かせる効果があり、青を見ると、感情ではなく合理的に判断がしやすくなります。
また、集中力も高まるので、仕事には良いことばかり。
相手には、「クール」・「知的」・「信頼」といった優秀でデキる男を演出できる効果があります。
反面、「冷たい」・「面白みがない」といったイメージも持たれやすいため、使いすぎには注意しましょう。
デキる男の必須カラー、ピンク
「男がピンクなんて!」
ダンディズムあふれるあなたはそう思うかもしれません。
しかし、ピンクは、デキる男にとって今や欠かせない色といっても言い過ぎではないでしょう。
ピンクには、「ロマンチック」・「優しい」・「華やか」といった印象があり、「恋愛」や「幸せ」といったことを連想しやすいため、女性からの人気が高い色です。
女性がビジネスシーンで活躍することが珍しいことではなくなった今、デキる男はいかに上手く女性と仕事ができるか。
商談相手が女性だったり、社内の女性社員と接したりする時に、ピンクを上手く身に着けることで、女性に安心感を与えることができます。
ピンクを上手く使える男性がデキる男ともいえますね。
親しみやすい黄色
あなたは初対面で、「とっつきにくい人だな」という印象を持たれたいですか?
それとも、「親しみやすい人だな」という印象を持って欲しいですか?
人が第一印象で、その人を判断するのは時間にして6秒。
その第一印象を覆すために必要になる時間は、2時間=7,200秒。
第一印象で「とっつきにくい」という印象を持たれたら、それを覆す時間は、第一印象で使った1,000倍以上の時間が必要になってしまいます。
初対面で、「親しみやすい」第一印象を与えたいなら、黄色を使いましょう。
黄色には、「明るい」・「安心」・「活発」といった効果があるので、楽しいそうな人だと印象づけることができます。
お笑い芸人の方が全身黄色のスーツを着ているのは、これが理由ですね。
オレンジで人気者に!
オレンジは、赤と黄色の中間色なので、この2色の性質を併せ持っています。
「明るい」・「活発」・「情熱的」といった赤の特徴と、「親しみやすい」・「楽しい」といった黄色の特徴ですね。
なので、オレンジ色を身につけることで、「陽気」・「社交的」といったイメージを与えることができますし、「喜び」や「幸福」といったイメージを持ってもらいやすくなります。
にぎやかな人間関係を象徴する色でもあるので、初対面の人が集まるパーティーや異業種交流会などで身に付けると、人気者間違いナシです。
温もりを感じさせる茶色
ファッション業界では古くから、「景気が悪いと茶色が流行る」と言われています。
茶色には、「堅実」・「安心」・「リラックス」といったイメージがあるので、ムダな出費を抑えたいという心理が茶色に反映されるのかもしれませんね。
茶色は、アースカラーともいわれ、「土」や「木」を連想させ、自然と温もりを感じさせてくれる色でもあります。
また、茶色は自分への注意を逸らす色でもあるので、周りから目立ちたくない時、コーディネートに取り入れてみてはいかがでしょうか?
リラックス効果がある緑
仕事でストレスが溜まった時や、人間関係でイライラした時、自然がたっぷりあるところに行って、リフレッシュしたいと感じたことはありませんか?
自然に囲まれたといえば、イメージする草木の色である緑。
自然から得られるリラックスや安心感を私達は緑という色から感じるようです。
そんな緑からは、「安定」・「リラックス」・「回復」・「生命力」といったキーワードを連想し、癒しの効果がある色です。
緑色をコーディネートに取り入れることで、相手の気持ちを落ち着かせ、安心感を与えることができるので、苦手意識のある上司や取引先と会う時には役に立つ色でしょう。
カリスマ性の象徴、紫
動の赤と静の青という、まったく正反対の色が合わさった紫。
自然界でもあまり見かけることがないこの色は、古くから高貴の象徴とされ、洋の西と東を問わず、限られた地位の人しか身にまとうことが許されない色でした。
また、セラピストやヒーラーも好んで使う神秘性の高い色でもあります。
そんな紫が醸し出すイメージは、「華麗」・「高貴」・「崇高」・「魅力」。
神秘的な魅力や精神性が高いというイメージを持たれる紫は、カリスマ性をアップさせるにはピッタリな色です。
部下からの忠誠心を高めたい時には、紫を取り入れてみるのがいいでしょう。
また、感性が刺激される色でもありますので、クリエイティブが問われる仕事に取り組む時にはオススメの色ですね。
シュチュエーション別の色使いはコレ
商談は黒とオレンジでバッチリ
交渉の際には、相手にペースを握られるより、コチラが主導権を握りたいものですよね。
そんな時、効果的なのが、黒。
黒を身につけることで、流れを呼び込むことができるでしょう。
また、固い意思や粘り強さを表す色でもあるので、ゼッタイに譲歩が許されない交渉時には有効です。
ただ、威圧感だけを示す黒だけだと、相手もプレッシャーを感じてしまいますので、親近感が湧くオレンジをアクセントとして使うと、コミュニケーションを円滑に取ることができるでしょう。
大事な商談時には、黒のスーツにオレンジのネクタイでコーディネートはバッチリです。
プレゼンでは日本流のカラーコーディネート
プレゼンといえば、アメリカ大統領にならって、ネイビーのスーツに赤いネクタイ。
と思いがちですが、真っ赤なネクタイは日本のビジネスシーンにおいて、一般的かといわれれば、少し違和感を覚えます。
ここは原色である赤より少し落ち着いたワインレッドのネクタイがオススメ。
こうすることで、ネイビーが持つ落ち着きはそのままに、赤の情熱を秘めた印象を相手に与えることができます。
プレゼンでは、ネイビーのスーツ、ワインレッドのネクタイで上手くいくことでしょう。
謝罪では炎上させないグレーを
キャリアを重ねると、自分のミスはもちろん、部下が犯したミスでも、会社を代表して謝罪に出向くことは必要になる場面です。
でも、謝罪に伺って、先方の火に油を注ぐような結果だけは避けたいですよね?
そんな時に使いたい色が、グレー。
グレーには、従順さを表し、相手の怒りを沈めてくれる効果があります。
もちろん、スーツの下のシャツは誠実さを表す白がマスト。
謝罪に伺うなら、グレーのスーツに白のシャツで出向きましょう。
コミュニケーションが求められる接待・会食には黄色やオレンジが効果的
スムーズなコミュニケーションが求められる接待や会食。
こんな時は、社交性の高さをアピールできる黄色やオレンジといった色を使いたいですね。
活発で親しみやすい印象を与えることができるので、コミュニケーションも円滑に取れることでしょう。
かといって、全身が黄色では、派手すぎてしまうので、グレーやネイビーのスーツに黄色かオレンジのネクタイを合わせてみてはいかがでしょうか?
会議では心を落ち着かせる緑を
会議を成功させたい時は、緑を取り入れましょう。
緑には、心を落ち着かせる効果がありますので、意見が割れてまとまらない時でも、コチラの意見に耳を傾けてもらいやすくなります。
よく会議室で観葉植物を見かけるのは、参加者の心を静める効果があるからですね。
円滑な話合いがしたい場面では、緑色のネクタイやポケットチーフを取り入れると効果的でしょう。
デート・合コンではピンクを上手く使って
デートや合コンでは、女性ウケが良いピンクを使いこなしたいですね。
ピンクのシャツをスーツの中に着るのもいいですし、ピンクのネクタイを合わせることで、女性からの印象が良くなります。
特に初対面の女性の場合だと、相手の警戒心を取り除くためにもピンクを使うことはとても効果が高いです。
ただ、どぎついピンクは下品に見えてしまいますので、使うなら淡いピンクがいいですね。
ピンクを上手く使いこなせるかが、女性と上手く付き合うコツです。
まとめ
今日、着ていく服をコーディネートするのに、自分が着たい色を選んでいる人も多いのではありませんか?
色が相手に与える効果は、想像している以上に私達に影響を及ぼします。
2008年のアメリカ大統領選でヒラリー・クリントンがバラク・オバマとはじめて戦ったとき、選挙戦の序盤では、「男とも対等に戦える強い女だ」という印象を与えるために威厳やプロフェッショナルを感じさせる黒のスーツで人前に出ていました。
しかし、オバマ氏が優勢になると、巻き返しを図るために、赤や黄色といった女性らしさをアピールする色彩のスーツで登場するようになりました。
このように、アメリカでは専属のカラーコーディネーターがついて、政治家のイメージを作ることは当たり前のように行われています。
それくらい色は影響を与えるので、色の使い方次第ではビジネスの結果を変え、あなたの人生をも変えるといえます。
ぜひ、それぞれの色が持つ効果を理解して、ビジネスでも上手く活用してみてください。