オーダーシューズを作るなら、失敗はしたくありませんよね。
オーダーシューズは、作る側も慎重を期して万全の配慮をもって政策に当たりますが、作ってもらう側も注意すべきことがあります。
オーダーシューズを作る際の、注意すべきこととは?
また、知っておいた方が良いこととは?
この記事では、オーダーシューズを作る時、知っておいた方が良いオーダーシューズ製作の流れや製法の種類、試し履きの時の注意、足のトラブルについて、お伝えします。
オーダーシューズを作りに行く前に、ぜひじっくりとお読みください。
オーダーシューズの注文の流れ
まずは計測です。
オーダーシューズにはフルオーダーとパターンオーダーがあります。
パターンオーダーは、すでにある数種類のラスト(木型)の中から自分に合ったものを選び、靴を作っていくオーダーです。
フルオーダーは、自分専用のラストを作ることから始めるオーダー。
スーツのフルオーダーと、パターンオーダーに似ていますね。
ラストのつくり方はお店によって千差万別ですが、今回はギブスを使ったドイツ式の方法を採用しています。
まずは計測
足を採寸します。
測定するポイントは、
「足長」「足囲」「くるぶしの高さ」「足の特徴」
です。
フットプリントで足裏を確認
足裏のどこに体重がかかっているか、足の状態を正確にチェックします。
ラスト(木型)は足型のこと
石膏でギブスを作り、ラストと呼ばれる足型をとります。
(初回のご来店ではここまでの工程になります)
ラストのチェック(テストシューズ)
ラストが作られたら連絡が来るので、来店します。
木型から簡易のテストシューズが作られているので、履いてチェックします。
好みのデザインを決定する
目的や用途に応じて、好みのデザインを決定します。
仮靴合わせで微調整する
仮靴が出来ているので履いてチェック、微調整してもらいます。
念には念を|最終調整
出来上がった靴を履いて、最終調整が行われます。
歩行チェック、フィッティングなどをします。
待ちに待った納品です
フルオーダーの靴で試し履きをするのは、調整、修正用の仮靴と、実際に顧客に納品する本靴の2足の、合計2回。
靴のオーダーは難しいので、まずは仮靴を履いて入念なチェックが行われます。
その後、本靴を製作し、最後に微調整を行って完成です。
オーダー時の注意
オーダーシューズを作る過程の中で、仮靴を履いて調整するが2回あります。
実は、その時に注意すべきポイントやコツがあります。
座って両足で履く
試し履きの時は、必ず座って、両足履きましょう。
立ったまま履くと、靴の中で足が前に移動してしまって、きつく感じることがあります。
両足で履くのは、足のサイズは左右で違うからです。
足の大きさがピッタリ同じ人は、ほとんどいないとのこと。
靴下はその靴を履く時と同じもので
休日に合わせに行くと、ついビジネス用ではなくて、厚めのスポーツタイプのものを履いて行ったりしてしまいます。
いつものビジネス用を履いていかない時には持参して、試し履きするときに履き替えましょう。
靴下の厚みで、履いた感じがだいぶ変わります。
履いたら歩き回る
ただ足を入れるだけでは、歩いた実際の感じが分かりません。
店内を数メートル歩いたり、しゃがんだりしてみてください。
色んな格好で不具合がなければOKです。
靴の製法の種類
靴には色々な製法があるということをご存知ですか?
靴を選ぶときに、製法の特徴と見分け方を覚えておくと、用途に合わせて的確に選ぶことが出来ます。
イタリア靴の伝統|マッケイ製法
イタリアで古くから伝わる製法で、アッパーとインソール、アウトソールを直接縫い付けて作られます。
靴の中を見てみると、縫い目が目で見て分かるため、判別がしやすいです。
シンプルな構造のため、ソールの返りが良く、軽く手柔らかく、通気性も良いのが特徴です。
ただし、クッション性には乏しく、長時間の歩行にはあまり向いていません。
因みに、日本で最初にマッケイ製法を導入したのは、現在でもハイクオリティの靴づくりを行っている、UNION ROYALという老舗の会社です。
クリスチャン・ディオールやシャルル・ジョルダンと技術提携し、ミラ・ショーンとライセンス契約を交わしています。
疲れにくい|グッドイヤーウエルト製法
甲の部分のアッパーと、そこの部分をつける時、中底につけられたリブとアッパーをすくい縫いした後、中物とシャンク(芯材)を詰めてから、アウトソールを出し縫いする製法です。
特徴はリブと細革というパーツを使うこと。
中物を沢山入れられるため、長時間履いても疲れにくい、耐久性が良いというメリットがあります。
履いているうちに中物が足の形に馴染み、フィット感が高まります。
ソール交換が可能であることもメリットの一つです。
グッドイヤーウエルトの原型|ハンドソーン製法
グッドイヤーウエルト製法の原型で、手縫いで行われる製法です。
19世紀後半に機械によるグッドイヤーウエルト製法が開発され、大量生産できるようになりましたが、近年は着心地の良さなどから、ハンドソーン製法が再び見直されるようになってきています。
完成するまでに非常に時間がかかりますが、職人が一針一針縫った希少な技術の高さなどから、完全ハンドメイドのお店も増えてきています。
ハンドソーン製法は、リブを使用しないため、底の反りかえりが良く、履き心地も軽く感じられるのが特徴。
リブがないため、アッパーとライニング、ウエルトが中底にしっかりと縫い付けられているため、耐久性に優れています。
また、グッドイヤーウエルト製法より中物のコルクが薄いため、履き始めからフィット感が良いのが特徴です。
カジュアルシューズに使われる|ステッチダウン製法
アッパーの端を外側に向けて表底に貼りつけ、出し縫いする製法。
大人のウォーキングシューズやカジュアルシューズに適しています。
反り返しが柔らかい|プラット製法・カルフォルニア製法
アッパー、中底、裾テープを縫い合わせて袋状にし、裾テープを表底に貼りつける製法です。
中底には薄くて柔らかい素材を使うので、反り返しが柔らかいのが特徴です。
裾テープをプラットフォームに見立てていることからプラット製法、カリフォルニアで開発されたため別名カリフォルニア製法と名付けられました。
耐水性に優れた|ダイレクト・バルカナイズ製法
アッパーと中底をつけた後、袋状になったところに金型と中底を活かして空間を作り、そこにゴムを溶かして整形しながらアッパーに固定させる製法です。
とても頑丈な底付け方法で、耐水性にも優れています。
安くてお得|セメント製法
アッパーと表底を接着剤で張り合わせる製法。
軽くて安価なのが特徴です。
グッドイヤーウエルト製法の流れ
グッドイヤーウエルト製法は、ビジネスシューズを作る時に多く用いられる製法です。
靴の製法を知っておくと、修繕に出す時に、修繕が可能な個所か、リペアできるのかなどが分かります。
革を裁断する
裁断は、革の状態を見極めたうえでパーツごとの抜型を使用して最適な場所を切理抜いていく、とても重要な工程です。
革は、動物が生きていたときについた傷や、血管の痕、虫食いなどがあるため、傷などが製品に入らないよう裁断する必要があります。
また、革には伸びる性質があり、部位によって伸びる方向が違います。
パーツを縫い合わせ、薄いシルエットに|製甲
製甲とは、厚みが減ってシルエットがきれいになり、足あたりもよくなる工程です。
革から裁断された各パーツを、ミシンを使って縫い合わせます。
ここではまだ、ただ平面なもの同士を縫い合わせただけなので、足の形にあったような丸みはありません。
革が重なりあう部分は、「漉き(すき)」と呼ばれる作業で、革の縁を薄くします。
芯材を入れて丈夫にする
芯材は、歩行の際にかかとを安定させ、靴の形を保つ目的も果たす、重要な役割を果たします。
製甲が終わって型紙から立体の形になったら、かかと部分に「カウンター」と呼ばれる芯材を入れて補強をしする工程が、芯材を入れるという工程です。
形が月の形をしているため、「月型芯」とも呼ばれています。
革を引っ張りシワを伸ばして立体的に|釣り込み
革を引っ張りながらシワを伸ばしていく、見た目に影響のある大事な工程です。
ラストと中底を入れた状態で、微妙な力を加えながら革を引っ張り、足の丸みを作りだし、より立体的にする工程です。
力を加える際、機械を使ってしわを伸ばしながら行います。
職人が、ワニグチと呼ばれる大きなペンチのような道具を使って、手で引っ張りながら作業します。
ラインに沿って革をワニグチで引っ張り、中底を包み込むように整形し、釘を使って固定します。
つま先は見た目の重要さ、横やかかと部分は履き心地を大きく左右するため、職人が長年の経験による勘で、革の伸びを考慮しながら行います。
ソール(靴底)をつける
靴の履き心地を左右する、底部分の工程です。
まず、リブが付いた中底に甲革と外底をつなぐ細革を縫い付けます(すくい縫い)。
その後、リブに囲まれたスペースに、中のクッション材となるコルクを敷き詰めます。
このコルクを「フットベッド」と呼び、グッドイヤーウエルト製法の特徴ともいえます。
コルクは履きこめば履きこむほど沈んでいき、自分の足に合う履き心地になります。
コルクは靴によって、成型されたもの、天然の練りコルクを、コテを使って敷くものがあります。
本底(外底)をつける
本底を縫い付けることを「出し縫い」と言います。
出し縫いをして、やっと地面にじかに接する靴底が出来上がります。
靴の見栄えを良くするコバ仕上げ
靴の底のサイドをコバと言います。
コバを削って、靴の見栄えを良くします。
見えない部分も丁寧に|底仕上げ
革底の場合、かかと部をつけ、底の表面にペーパーをかけて色を塗り、綺麗にします。
アッパーの仕上げ
リーガルでは主に、アンティーク仕上げ、焦がし仕上げ、コードヴァン仕上げの3種類のアッパー仕上げがあります。
全体のチェック
最後に、最終チェックを行います。
リーガル特有の刻印押しなど、少し工程を端折りましたが、グッドイヤーウエルト製法の流れは分かっていただけたかと思います。
足のトラブルに対応したシューズを作るのもオーダーシューズの目的
足は心臓に血液を送るポンプの役割をしています。
また、足裏にはたくさんのツボが集中しているので、本来は歩くと健康にいいはずですが、足にトラブルがあると、歩くこと自体が痛かったり苦痛だったりします。
足に何かトラブルがあるということは、今まで履いてきた靴が自分の足に合っていなかったということです。
トラブルを治して、健康な足で靴を履きませんか?
シューフィッターは足の健康や病理についても学んでいます。
足のトラブルに応じたオーダーシューズを作ることで、歩きにくさを解消し、トラブルを徐々に改善していきます。
ここでは、オーダーシューズを作りたい目的として、よくあるトラブルを挙げてみます。
巻き爪を考慮してシューズを作る
巻き爪は深爪などが原因で発生し、合わない靴で圧迫されて悪化します。
爪は元々巻いていく性質があり、普段は地面をける時などの圧力で爪が平らになるため巻いていきません。
しかし、深爪をすると爪の縁が皮膚に食い込みやすくなり、更に靴の中が窮屈だと爪が平らな状態になれないため、悪化してしまいます。
巻き爪の対策は、爪を伸ばしておくことですが、痛みが激しいと歩行が困難になるので、痛みが大きくなったら整形外科などで治しましょう。
開張足(かいちょうそく)に対応したシューズ
あまり聞いたことがないかもしれませんが、日本人の足のトラブルで最も多いとされるのが、開張足です。
足の裏は3つのアーチから構成されています。
縦の内側のアーチ(土踏まず)
縦の外側のアーチ
横のアーチ
この、横のアーチの機能が低下していることを開張足と言います。
横のアーチはバネの働きがあり、身体にかかる衝撃を分散して吸収しますが、横のアーチの機能が低下すると衝撃をうまく吸収できなくなります。
また、3つのアーチは複雑に連動しているため、どれか一つの機能が低下すると、同時に後の2つも低下してしまいます。
縦のアーチが低下すると、扁平足を誘発し、足全体が扇状に広がります。
開張足が進むことで起こる弊害
扁平足
足の指の付け根に体重がかかることで神経が圧迫される
タコやウオノメができやすくなる
外反母趾などの変形が起こりやすくなる
開張足はペロッティと呼ばれるパットを用いてサポートすることが出来ます。
アーチにパットを置くことで、アーチの落ち込みを防ぎます。
外反母趾に対応したシューズ
外反母趾は、誰でも一度は耳にしたことのある足の変形です。
女性に多くみられますが、男性でも外反母趾の人がいます。
外反母趾は、合わない靴を履き続けることで、足の親指が極端に内側に変形してしまう病気です。
足に合わないのは、下記のような例になります。
つま先まで足を詰めてしまう原因を防ぐ
靴のサイズは普通、足の裏の長さで決めます。
しかし、足の長さで選んだ靴にフィット感がないと、ワンサイズ下のサイズに落とします。
フィット感のない原因は、足の形が細いこと。
足の幅が細めの人は、ワンサイズ落とす傾向にあり、サイズを落とすと今度はつま先が靴の先端までぎゅうぎゅうに詰め込まれることになります。
足の甲で押さえられていない原因を防ぐ
適切なサイズを選んでも、靴のデザインによっては足の甲がきっちり固定されない場合があります。
足の甲でしっかり固定されていないと、足は靴の先端の方へどんどん移動してしまい、つま先の方で変形してしまう傾向にあります。
開張足が原因の人のためのオーダーシューズ
外反母趾は、靴の形に関係なく起こることが明らかになっています。
それは、開張足による外反母趾。
高齢者によく見られる現象です。
人間は歳をとるに従い、前傾姿勢になっていきがちですが、前傾姿勢の時の足の重心は、指の付け根。
身体の重みが指の付け根に集中すると、足の横アーチが徐々に崩れ、開張足になります。
開張足になると足裏から脚にかけての筋肉のバランスが崩れ、本来下向きになるはずの重力が外側に向いていき、外反母趾が発生します。
外反母趾の対処法は、足に合った靴を履くことです。
もし、選び方がわからないときは、シューフィッターに声をかけ、一緒に選んでもらいましょう。
強剛拇指(きょうごうぼし)に対応するオーダーシューズ
歩く時、足の親指に強い痛みと腫れが生じるトラブルです。
男性に多く、片足だけの症状もよく見られますが、実は原因はよく分かっていません。
痛みの原因は骨の出っ張りがぶつかり合うことにあります。
症状が似ているので痛風と間違われがちですが、親指を足の甲寄りに引っ張ると、骨が出っ張ります。
歩く時には、指を使って地面を蹴りだしますが、強剛拇指の場合親指が痛くて曲がらず、蹴りだす運動ができません。
そのため、別の指に負担がかかり、体全体のバランスが崩れます。
そのままにしておくと、やがて関節の破壊が起こり、歩行が困難になり、手術が必要となります。
症状が軽い場合は靴での対処が可能です。
底の硬い靴を選ぶことや、親指を曲げないようにする規制靴を作ることで、親指が曲がらないようにします。
また、横アーチ専用のパッドを用いて中足骨という部分を持ち上げ、親指が曲がらないようにすることもできます(パッドの位置はシューフィッターやお医者さんにみてもらいます)。
タコの痛みを緩和するオーダーシューズ
タコができている人は多いと思いますが、タコの原因は重心がかかりやすい部分や、靴と皮膚がこすれて角質が硬くなることにあります。
タコは元々靴の中で足が靴にぶつかるときに出来る摩擦熱から体を守るために起こる防御作用で、同じ個所が外的な刺激を受け続けると、その部分の表面の角質がどんどん増して行きます。
角質が厚くなると肉が圧迫されて痛みが出てきます。
角質が硬ければタコ、汗をかきやすく、湿ったところで熱を持つと水ぶくれになります。
タコは日頃軽視されがちですが、糖尿病を患っている人には致命傷になることもあるため、注意が必要です。
タコができるのは、靴が合っていないからなので、まず、足に合った靴を選びましょう。
タコを削るなどのケアをするとともに、自分の足を良く知ったうえで靴を選ぶことが大切です。
また、インソールを工夫したり、ストレッチャーで靴を部分的に伸ばしたりしてもらうのも効果的です。
ウオノメの痛みを緩和するオーダーシューズ
ウオノメはタコに似ていますが、タコが表面の確執が硬くなるのに対して、ウオノメは芯があります。
角質の真ん中に芯があり、魚の目のように見えることからウオノメと呼ばれていますが、正式には「鶏眼(けいがん)」と言います。
ウオノメの原因も、やはり靴が足に合っていないことです。
タコが外に向かって変形するのに対し、ウオノメは表面が小さい代わりに、体の内部にドリルのような形で育ち、芯が出来ます。
ウオノメは触れただけでも激痛が走るため、歩くのが困難になります。
病院で治療をするとともに、自分に合った靴を選ぶことが大切です。
治療中はウオノメ専用のパッドなどを使用し、直に靴に当たらない工夫をします。
まとめ
オーダーシューズを作る時の注意点や知っておくべきことについてお伝えしました。
オーダーシューズを注文するときの流れは、お店によって多少違いがありますが、フルオーダーの流れは大方ご紹介したような、
計測し、
ラスト(木型)を作り、
デザインを決め、
仮靴で調整し、
納品用の靴で微調整し、
納品
という流れです。
オーダーシューズは万全を期すため、納品用の他に、調整用としてもう1足作ります。
そうしたひと手間を加えることにより、失敗を防ぎ、あなたにピッタリの靴が完成します。
オーダー時の試し履きのコツは
座って履く
両足で履く
調整用の靴を履く時の靴下の厚みに注意
履いて歩きまわってみる
でした。
また、靴の製法には数種類あり、今回は7種類をご紹介しました。
中でもビジネスシューズを作る際に最もよく用いられる、グッドイヤーウエルト製法についての流れは知っておくと便利です。
靴の構造を知ると、自分で手入れをするときや、修理に出すときに役立ちます。
最後に、オーダーシューズは足のトラブルにも適応すること、良くあるトラブルとして、巻き爪や開張足、外反母趾、強剛拇指、タコ、ウオノメについて、原因と靴で出来る改善方法も、ご紹介しました。
足は移動に欠かすことのできないものですし、血液を心臓に送る大事な役割もあります。
そして、その足を保護するものが靴。
靴は、ついデザインの格好良さだけで選びがちですが、自分に合った靴を選ぶことで、毎日を快適に過ごせるばかりか健康維持にもつながります。
オーダーシューズを作るときは、知識と経験が豊富なシューフィッターさんと、相談しながら作るのがオススメです。